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お礼SSS(静雄視点)です。
人に愛を告げたことは、今まで一度もなかった。
告げても通じないと知っていたから。
自分の力を知った幼い頃から、他人に自分を分かって貰うことすら諦めていた。
愛を告げる、自分の気持ちを伝える単語すら忘れかけていた。
一生、想いを誰かに渡すことはないと思っていた。
(まさか、こんなふうになるなんて、な)
「好きだ」
「………ぁ、あ、の…」
「帝人、好きだ」
「……ひゃく、っ!し、しずおさん…っ」
「好きだぜ」
「も……っ、わ、わかってます、から…っ」
後ろから細い身体に腕をまわして、耳元に何度も言葉を吹き掛ける。
くすぐったそうに帝人が身体を揺らしても、苦しくならない程度に逃げないようにやわりと力を込める。
踏み跡のない雪のような色をしている項にも言葉をぶつける。
今まで抑えていた箍が外れたように、言葉が溢れて止まらない。
(くそ……っ)
帝人の一回り以上小さな身体を抱き締める。
腕の中にすっぽりと隠すように包み込む。
「好きだ、好きだぜ……なぁ」
「し、すおさん……もう、」
止まらない言葉に帝人が訴えるように俺を見上げる。
ぷくりと柔らかい頬を膨らませても、好きだとそこに唇を押し当てる。
そのままぺろりと舐めて、もう一度声を出す。
「……静雄、さん」
「ん?」
桃色に染まった顔が困ったようにふにゃりと緩む。
唇が好きと言葉を作る前に、帝人が俺のシャツを指先にかける。
「……しずおさ、…すき、です」
「帝人……」
「ぼくも、すき……」
甘い声を隠すように、帝人は少しだけ俯く。
途端に止まった、溢れていた言葉。
帝人の言葉が、俺の言葉を止める。
しつこいぐらいの俺の言葉を嫌がらずに受け止めてくれて、同じ言葉を返してくれるのは帝人しかいない。
もう少しだけ腕に力を込めると、掠れた音が、すき、と響いた。
(好き/END)