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お礼SSS(帝人視点)です。




静雄さんを怖い怖いとみんな言うけれど、そんなことはないって僕は知っている。

「帝人」

ぼんやりと歩いていると、大きな手が僕の肩を抱き締める。

きっと静雄さんにとっては添えるだけの力は優しい。

でも、抱き寄せられると簡単に僕の体は静雄さんの思うが侭に動くぐらいの力の差。

無意味にこういうことをやる人じゃないから、どうしたんだろうと綺麗で格好いい横顔を見つめる。

何度見てもドキドキする横顔の向こう側に見えたのは、速いスピードで通り過ぎていく車。

(……あ、)

静雄さんは僕を反対側にして、自分が車道側にまわってくれたんだ。

ほんのりと心が小さな優しさに暖かくなる。

こういう優しさがたくさん積もって積もって、僕は静雄さんを好きになったし、好き、なんだ。

「……、ありがと、ございます」

「ん?」

きっと聞こえているけれど、何もなかったように振舞ってくれる。

大人で、やさしい、やさしい人。

(きっと、僕だけが、知っているんだ)

静雄さんの優しさを知ってもらいたいけれど、僕だけの心の中の宝物にもしたい。

複雑な心を時々持て余すのは、こういう時だ。

(……僕はどうすればいいんだろう)

「帝人?」

「なんでも、ないです」

贅沢な悩みを抱えたまま、勇気を出してそっと体を静雄さんに寄せると今度はそのまま肩を抱き締めてくれた。





(やさしさ/END)