拍手ありがとうございました!
お礼SSS(まいふぇりばりっとたっち)です。
(いいな)
そう思ったのは、ほんの一瞬。
細い道を静雄さんと並んで歩いていた時、横を通ったカップルが僕達を除けるように一列に並んだ。
すっ、と繋いだ、絡み合った、指先。
瞬間でも離れているのが切なくて悲しくて、つい繋がってしまった感じだった。
そんな自然な空気と、穏やかに好き合う雰囲気が羨ましいと思ったのは、本当に心の中でちくりと響かせたぐらい。
静雄さんと気持ちが通じ合っているからって、外で、しかも人が通る道でそんなこと出来るとは思っていない。
「………」
「っ、」
なのに、僕の指先が温もりで、溢れた。
高い体温が突然包み込む。
びくりと指が震えても、離れるのを許さないと言わんばかりの力で握られる。
(人が、いるのに)
「しずお、さ……」
「行くぞ」
長い静雄さんの指と、僕の短い指が絡まったまま人の間をすり抜けて行く。
きゅうぅっと胸が、苦しいぐらい、痛くなるのは、申し訳ないぐらい幸せ過ぎるから。
(しずおさん、しずおさん……、しずお、さん……、)
どうしてこの人は僕の気持ちを受け止めようとしてくれるんだろう。
不器用で、でも柔らか過ぎる、心遣いと気遣い。
数歩前を歩く静雄さんの視線はサングラスで隠されて見えない。
でも、きっと、とても優しい色をしている。
(ゆびをからめる/おわり)