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お礼SSS(新婚静帝)です。
『もうすぐ帰る。さくらんぼは買えた』
静雄さんからメールが来たのは、10分前。
焼きそばの麺をお塩を少量入れたお湯で茹でる。
涼しげなガラスのお椀に作ったお汁を入れて、麺の上に卵と鶏肉、きゅうりとトマトを盛り付ける。
あとはこれで静雄さんが買ってくれたさくらんぼをのせるだけ。
テーブルの上に、お揃いのクロスと敷いて、色違いのお箸と蓮華を箸置きにセット。
(使ったもの洗っちゃおう)
まな板や包丁を洗っていると、玄関のドアが開く音が聞こえてくる。
「ぁ……!」
スリッパをぱたぱた鳴らして、キッチンから玄関まで行くと、静雄さんが皮靴を脱いでいた。
「っ!」
数時間しか離れていないのに、毎日、こうやって帰ってきてくれる瞬間に泣きそうになる。
生活をしていく上で大切だと分かっているけれど、静雄さんの仕事は危険だから常に不安なんだ。
「帝人。……ただいま」
「おかえりなさいっ!」
長い腕が伸びてきて、僕を抱き寄せると一緒のタイミングで僕も静雄さんの広い背中にしがみ付く。
片手で僕を抱きしめて、額に優しく唇が触れる。
僕もおかえし、静雄さんの頬に唇を押し当てた。
「ご飯、しましょっか?」
「ああ」
「さくらんぼ、ありがとうございます。僕完成させちゃいますから、静雄さん着替えてきてください」
ほんのり寂しさを感じながら、静雄さんから離れて、はいと腕を伸ばす。
「………」
「静雄さん?」
大きな手は確かにスーパーの袋を持っているのに、僕に渡してくれない。
困ったように、僕を見つめるだけ。
じーっと見ると、さくらんぼのパック以外の影が見えるのは、気のせいじゃない。
「……静雄さん。プリン、買ってきたでしょう」
「プリンじゃなくて、ヨーグルト、だ」
小さな子供のような言い訳が、ちょっと可愛いけど、駄目。
「一緒です!」
「悪い……」
お仕事で帰ってきたばかりの静雄さんに怒りたくないけれど、ちゃんと言う。
でも、しょんぼりする静雄さんが実家で飼っている大型犬に見えてきて、いつものことだけど、これ以上は怒れない。
これも、いつものことなんだけれど。
(……仕方がない、なぁ)
「……早く着替えてきて、ください」
「帝人、」
「一緒に食べてくれたら、許してあげます」
静雄さんが甘い物があんまり好きじゃないのは知っているから、ちょっとだけ意地悪。
でも、静雄さんは嬉しそうに笑って、おう、と頷いた。
(平和島家の日常オワリ)