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お礼SSS(新婚静帝)です。
部屋の掃除を終えて、壁に掛かっている時計を見ると、もうすぐ五時半になりそうな時間。
「夕飯どうしようかな」
今年の夏はとても暑くて、今日も同じ。
窓の外を見ると夕焼けでも充分熱を放っている。
(あんまり外、出たくない)
扇風機が回っている部屋だってこんなに気温が高いのに、外はもっと暑いはず。
「冷蔵庫、冷蔵庫」
スリッパをぱたぱた鳴らして、台所にある冷蔵庫の前に立つ。
(何かありますように、っと)
家事を手抜きしたくないから、夕食になる食材がなかったら、近所のスーパーに行かないと。
「えっと……」
まずは野菜室を開ける。
「トマトと、きゅうり……レタスがあればサラダが出来たんだけどなぁ」
それから、冷蔵室。
「先週作った焼きそばの麺がある。……卵もあるし」
今日は暑いし、とピンと思いついたのは、冷麺。
ハムはないけれど、冷凍室に保存しておいた鶏の胸肉があったはず。
(蕎麦つゆにごま油と、ラー油をちょっと、お酢を加えれば、お汁も出来る)
「あ、」
冷麺に大切な”もの”が冷蔵庫にない。
人によって好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、僕は大好きで、静雄さんも好きだと言っていた。
でも、それだけを買いに出かけるのは、……どうしよう。
ちょっとずるいかなぁと思うけれど、見つめるのは、テーブルの上にある携帯電話。
(もうすぐ帰れる時間のはずだし、……いいよね)
言い訳を心の中でしてから、メールの新規作成を選んで、送信アドレスを呼び出す。
静雄さん、はーとまーく。
はーとまーくをつけたのは僕じゃなくて、狩沢さん。
仲のいい人達を呼んだ鍋パーティー。
ビールを飲んでテンションのあがった狩沢さんに勝てるはずもなく。
『ダーリンが嫌だったら、はーとまーくぐらいはつけないとね★』
申し訳なさそうに謝ってくれた門田さんが後で戻してくれと言っていたけれど、結局そのままにしている。
(……けっこん、してるんだもん、)
「お仕事、ご苦労様、です。…今日は、冷やし中華、ですが、」
「……さくらんぼ、がありません。スーパーで、買ってきてください、っと」
静雄さんも僕も、冷やし中華のてっぺんにはさくらんぼがないとだめ。
最後まで残しておいて、一緒にぱくりと食べるんだ。
「………あと、プリンは買ってきちゃ、駄目ですよ」
付け加えた文章は、おつかいを頼むときはいつも。
静雄さんはおつかいを頼むと、必ず余計な物を買ってきちゃう。
自分が食べるんじゃなくて、僕に買ってきてくれる。
それは嬉しいけれど、無駄遣いは、だめ。
静雄さんが一生懸命働いて、得るお金だから無駄遣いはしたくない。
(僕がお財布の紐を締めないと……!)
むん、と気合を入れると手の中の携帯が小さく震える。
『了解』
短い返信だったけれど、心がほんのりと温かくなる。
だって、まだ仕事中なのにこんなに早く返事をくれる。
好きな人に気にかけてもらえるのは、嬉しい。
仕事をしている時にごめんなさいと思うし、不謹慎かなぁと思うけれど。
(平和島家の日常ツヅクに続く)