視界の全てを覆うように広がる深いコバルトブルーの碧海(うみ)。


地平線の先の先まで見渡せそうな、普段は波の音しか響かない小高い丘に甲高い黄金の鐘の音が鳴り響く。


翠の木々が海風に揺れ、色とりどりの花々が咲き乱れる。


そんな場所にぽつりとある、名もない真っ白教会は雲一つない世界に溶けてしまいそうだが、それ以上に、純白なものがそこにはある。


ふんだんに細かく編まれた雪のような柔らかい白のレースに包まれた細身を、同じように白のタキシードに包まれた男が抱き上げる。


「……すげぇ可愛い、帝人」


「そ、そう、ですか…?変じゃないですか?」


「こんなに似合ってるのに変なわけねぇだろう」


床まで伸びるレースを払い、開いたクリーム色の額に男が唇を押しあてる。


美しいレースの奥に隠された花嫁の初々しい肌の色がまるで花咲く淡いピンク色に染まる。


もっとその小さな自分だけの花を開かせるように、男は鮮やかな金色の髪から頬にかけて、花嫁の愛らしい顔にすり付ける。


「し、しずおさんも、格好いいです」


「ありがとう。本当に、可愛いな……帝人」


視線が絡み合うと、自然に唇が合わさる。


男は片手で軽々と花嫁を抱き上げていて、空いた手は花嫁の胸の前で絡み合う。


花嫁も片手は男の首におずおずと回して、もう一方は男と繋いでいた。


離れないと繋ぎ合う大きさの違う手には太さは違うが、同じ銀色のリングがはまっている。


「………こんなに可愛くて、……たまんねぇよ」


「しずお、さ…」


花嫁の言葉が最後まで終わる前に深い口付けで奪い去る。


「ん、ぅ、」


小さな顔から零れる甘い鳴き声と、鐘、そして、波の音が、永遠に終わらない二人の愛を祝福するかのように謳っていた。