(この人、ぼくを怒らないでくれるんだ……)


一生懸命噛んでしまった指先を舐めれば、優しい目で見下ろしてくれる。


ちょっとだけ、安心したからかな、目蓋が重たくなってくる。


お腹は空いてるけれど、どうでもいいやって。


とにかく、…眠い、や。


でも、それは、とても優しくて、心地よくて。


さっき、気絶するように目蓋を閉じたのとは、全然違う。


「また眠そうだね 」


「そうだな」


小さな会話さえも子守唄のように聞こえて。


大きな手に背中を撫でられると、もう、堪えられない。


体がタオルに向かって倒れていくのが分かる。


そっと支えてくれたのは、やっぱり、あの大きな手のひら。


あんなに怖かったはずなのに、いつの間にかとても安心出来る場所になっている。




夢を見た。


ごしゅじんさまのゆめじゃなくて、黒髪の揺れる夢じゃなくて、金色がきらきら輝いていた。






(つづく)