(またわけわかんねぇ奴らが絡んできやがった…っ)
むしゃくしゃする気持ちを抱えたまま、その道を通ったのはたまたまだった。
そこは学校の帰り道でもなんでもねぇ。
「何だ?」
爪先にが触れたのは、ひっそりと隠すように置かれた小さな段ボール。
覗きこんだのも、たまたまだ。
やけに小綺麗なタオルの中に小さく丸まっている黒いもこもこした生き物。
下がっている三角形は耳で、時折揺れるのは、尻尾。
「猫、か」
両手で 掬うように抱き上げれば、体温がこの小さな体のどこにあるのか分からないぐらい冷たくなっている。
それなのに、小さな口から仕切りに出る息は熱の塊みてぇに熱い。
動物に詳しくない俺でも手のひらにいるこいつがまずい状態なのは分かる。
(捨てられてんのか……)
段ボールには拾ってくださいとは書かれていないが、みかど、と名前がマジックで書いてある。
(悪趣味な人間だ)
一度手の中に入れてしまえば、離せなかった。
こんな小さな生き物を見殺しには俺にはできねぇ。
(とりあえず動物病院、だな)
(つづく)