怒る前は一瞬目を閉じる。
困った時は、ちょっとだけ赤い瞳を見開く。
戦闘モードの時は、肩を少しだけ竦めて口をにいっと広げる。
ご飯が美味しいと思ったのかな、お米をいつもよりも多めに口に頬張る。
そんな、あなたの無意識な仕種に、新しいのが加わったのを、あなたは知らないんだ。
たとえば、二人で一緒にソファに座っていると、あなたの大きな手のひらがそっとミサカのお腹に触れる。
たとえば、いってらっしゃいとあなたを見送ると、
「あァ」
素っ気無く答えた後に、ふわりと風が吹くようにミサカのお腹を一撫でしてからあなたは玄関から出て行く。
たとえば、ミサカが怒ってしまって、あなたにたくさんたくさん文句を言うと、あなたはミサカのお腹を撫でてから、ミサカの頭を撫でる。
たとえば、
「おかえりなさい!ってミサカはミサカはあなたが今日も一日無事で帰ってきてくれたのが嬉しい」
「研究所に行くだけなのに無事に決まってンだろォが」
靴を脱いで、玄関に上がるあなたの腕が一直線に伸びて到達するのは、膨らんだミサカのお腹。
指先で何かを確認するとすぐに離れて、ミサカの横をあなたが通り過ぎる。
「ふふ」
「ンだよ」
突然笑ったミサカを不機嫌そうに、あなたは振り返る。
「なぁんにもないよぉ、ってミサカはミサカは含み笑いをしてみたり」
「意味わかんねェガキだなァ、相変わらずよ」
「ふっふーだ!」
あなただけが知らない、ミサカだけが、ううん、この子も知っている、あなたの無意識の仕種。
無意識の仕草