「いらっしゃい!ってミサカはミサカは満面の笑みで二人をお出迎えしてみたり!」





「元気そうじゃん。安心したじゃんよ」

「ほんとに」

ミサカに家族を教えてくれて、家族だった人達が、お家に遊びに来てくれた。

うれしくて、たのしくて、にこにこが止まらない。

「これ、お土産ね」

「うわーい!!ってミサカはミサカはこの包装と匂いからマルシェのショートケーキと推理してみたり!」

「そうよ」

「ありがと!ってミサカはミサカは、これを食べているミサカの隣であのひとがにがーい顔をしているのを予想してほくそ笑んだり!」

「ふふ。あの子には、これ。まぁいつも仕事場で会っているけれど、一応コーヒー」

「ありがとう!ヨシカワ!」

きゅっと抱きついてから、二人の前にお客様用のスリッパを置く。

「スリッパはいてね、ってミサカはミサカはサイズが少し大きいかもって心配してみる」

「大丈夫よ。ね、愛穂」

「おう。ありがとな」

ヨミカワとヨシカワがここに来るのは初めて。

あのひととミサカが結婚することになって、二人で暮らし始めてから、ずっと、ずーっと心配してくれていたのを知っている。

でも、あのひととミサカがちゃんと出来るようになるまでって見守って、待っていてくれた。

だから、今日はミサカはちゃんとおもてなしできるように頑張るって決めたんだ。

「ソファに座って、ってミサカはミサカはお茶を用意してくる!」

あのひとのお気に入りのソファにヨミカワとヨシカワが座るのを確認して、キッチンへ行く。

「ラストオーダー、あの子は仕事に行ってるの?」

「うん、ってミサカはミサカはなるべく早く帰ってくるって言ってたのを付け加えてみる」

ヨシカワの聞くあの子は、あのひとのこと。

マグカップにコーヒーを注ぎながら、答える。

「随分仕事熱心じゃん」

「最近ちょっと問題のある能力者の子が入ってきたから。……その子に自分を重ねているのかもしれないわね」

トレイにはコーヒーとミサカ用カフェオレが入ったマグカップ三つと、ヨシカワが持ってきてくれたケーキ。

「どうぞ、ってミサカはミサカは実は自分がケーキを楽しみにしていたり」

「ふふ、美味しそうなコーヒーをありがとう」

「ありがとな」

二人の前にあるソファに座って、頂きますと手を合わす。

コーヒーを飲んでケーキを食べながら、ヨミカワもヨシカワもあのひととミサカをたくさん心配してくれているんだって伝わってくる。

久しぶりでも二人はやっぱり優しくて暖かい。

あの人とミサカがどんな生活をしているか話していると、ガチャガチャと、玄関から物音が聞こえてくる。

このお家のドアを開けられるのは、あの人とミサカだけ。

「あら」

「もしかしてダンナが帰ってきたじゃん」

「ちょ、ちょっと行ってきます、ってミサカはミサカはお客さまを残して……」

立ち上がってどうしようと困っていると、ヨシカワがひらりひらりと追い払うように手を揺らす。

「いいから、私たちに構わずにお迎えに行ってあげなさい」

「そうじゃん。じゃないと私らが睨まれるじゃん」

「う、うん!ありがとう、すぐに戻るねってミサカはミサカは玄関までダッシュしたりー!」

ぱたぱたとスリッパをならして廊下に出ると、あのひとが背中を向けて、靴を脱いでいる。

「おかえりなさい!!」

あのひとが倒れないぐらいの力で抱きついてみると、じろりと綺麗な紅い瞳がミサカを映す。

「……てめェ、いつもいきなり飛びついてくンなって言ってるだろォが!」

「あのね、あのねっ、ヨミカワとヨシカワが遊びに来てくれているよってミサカはミサカは早くってあなたを急かしてみる!」

「あァ?あいつらまだいやがるのかよ」

「あなたが帰ってくるまで待っててくれたんだよ」

嫌がる顔はしているけれど、それが本心とは違うのをミサカは知っている。

杖を持ったのを確認して腕を掴んで引っ張っても、怒らないでちゃんと歩いてくれる。

リビングに戻ると、ヨミカワとヨシカワがにこにこ顔で出迎えてくれた。

「おかえりじゃん」

「おかえりなさい、わざわざ休日まで悪いわね」

「……いつまでいやがるンだか」
 
お気に入りのソファは二人が座っているから、ミサカが座っていた場所に寝転がるように体を倒す。

「コーヒー飲む?ってミサカはミサカはヨシカワから貰ったコーヒーの粒を振ってみたり」

「あァ」

「お昼は食べた?ってミサカはミサカはサンドウィッチならすぐに作れるよって付け加えてみたり」

「…食う」

「はぁいってミサカはミサカは冷蔵庫からハムとレタスを取り出したり」

キッチンでサンドウィッチを作るミサカをヨミカワとヨシカワがじーっと見ていた。

「どうしたの?ってミサカは首を捻ってみたり」

「……何にもない、じゃん」

「え、ええ」

二人ともお腹が空いているのかなぁと思ったけれど、お皿にのっているショートケーキはまだ残っている。

とりあえずあのひとの分のサンドウィッチを作って、マグカップにはコーヒー。

「出来た!ってミサカはミサカはトレイを取りにリビングに……」

「………いい」

ソファから立ち上がると杖をついて、キッチンに入ってくる。

「ごめんねってミサカはミサカは自分の手の小ささを嘆いてみたり……」

「転んで火傷でもされるほうがメンドくせェ。……こっちだけかせ」

杖をついているから空いている大きな手は一つだけで、熱いコーヒーが入っているマグカップを持ってくれた。

これは結構いつものことで、このひとの優しさ。

甘えてしまうのはごめんなさいと思うけれど、二人で一緒にいるんだなぁって、こういう時にじんわりと感じる。

もう、一人じゃなくて、家族がいるんだよって。

「ンだよ」

「どうしたの??」

マグカップとお皿をそれぞれ手に持って戻ってきたミサカ達を、ヨミカワとヨシカワはまたじーっと見つめていた。

「いやー、なんか、あてられちゃったじゃんよ」

「ほんとに。ちょっと羨ましくなるわね」








帰り道。

「ちゃんと幸せに生きてくれているわ、あの子達は」

「そうだな。自分達の足で歩いてくれているじゃん。寂しいけど」

「そうね」

そんな会話を二人がしていたのを、もちろん、あの人とミサカは知らない。


保護者さんたちが遊びに来ました