一枚の水玉柄のワンピース。

初めて買ってもらった、洋服。






あの人と同じ時を、痛みや苦しみを、たくさん知っている大切なものはクローゼットの奥にちょこんと畳まれてある。

「さすがにもう着れないよね、ってミサカはミサカは体に合わせてみたり」

きっと無理やりなら着られるかもしれないけれど、破れちゃう。

(うーん、持っていくか、どうするかミサカはミサカは腕を組んでなやんでみたり)

新しいお家に持っていくための大きなバッグがミサカの隣で準備が終わるのを待っている。

「なァにしてやがるンだ、お前は」

もう一人、ミサカを待っていてくれて、待ちきれなかったあのひとが、飽きれたような声を出す。

「アクセラレータ!あのねあのね、これ、憶えてるってミサカはミサカは尋ねてみたり!」

「あァ?てめェが着てたさみィ服だろう」

「そうなの!興味がないことは直ぐにわすれてしまうあなたが憶えてくれていて、ミサカはミサカは感動してたり!いひゃいッ!」

「アホ面でなァにを考えてやがったのかなァ」

「ミサカのほっぺたを引っぱらないでよっ、ってミサカはミサカは赤くなってしまったほっぺたをさすりながら抗議してみたり!

……・この服はもうミサカには小さいけれど新しいお家に持っていってもいい?、ってミサカはミサカはお願いしてみたり」

「てめェにはもう着られねェだろうが」

「うん、そうなんだけど……。あなたとの思い出がたくさん詰まっているからって、ミサカはミサカはいろんなことを思い出してみたり」

上目遣いで壁に凭れているアクセラレーターを見つめると、目を瞑ってはァと小さく溜め息ひとつ。

「……置いていけ。ンなの、新しいやつ買ってやる」

「えええ!って、ミサカはミサカはあなたの薄情さにショックを受けて、

なおかつミサカはミサカはあなたから守るようにワンピースをぎゅうっと抱き締めてみたり!!」

「捨てろとは言ってねェだろォが、くそガキ」

「え……??」

頭の上から降ってきた言葉に、たくさんのクエスチョンマークを飛ばしながら首を捻る。

宝石のような紅い瞳がすっと逸れて、いつの間にか広くなった背中をミサカに向ける。

「……新しい場所にソレは必要ねェ。それは、”ここ”に残しておけ」

あなたの言葉の意味が分からないほど、もう子供じゃないよ。

つらいときも、くるしいときも、かなしいときも、さびしいときも。

うれしいときも、たのしいときも、ミサカが生まれてからずっと一緒にいたワンピース。

新しいお家でも、きっと色んなことが起きるはずで、そんな時間を新しい洋服で過ごしていこうってことだよね。

「っ……、うんっ!!」






「今度は胸が開いている花柄のワンピースがいいかも、ってミサカはふぇろもんたっぷりであなたをゆうわくしてみたり!」

「アーアー、ちったァ俎板胸に凹凸が出来てから言ってくださィ」

「むー!!!」








一緒にいる幸せ